★☆★JNSAメールマガジン 第204号 2021.2.5☆★☆
2021/02/05 (Fri) 15:00
★☆★JNSAメールマガジン 第204号 2021.2.5☆★☆
こんにちは
JNSAメールマガジン 第204号 をお届けします。
JNSAのホームページでもご覧いただけます。
JNSAメールマガジン https://www.jnsa.org/aboutus/ml.html#passed
コラム最後にワンクリックアンケートがあります。
ぜひこのコラムの感想をお寄せください。
今回のメールマガジンはアメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.
の海老谷成臣様にご寄稿いただきました。
【連載リレーコラム】
E2EE プライバシーとトレーサビリティの境界線
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.
グローバルセキュリティ部長 海老谷成臣
（元警視庁サイバー犯罪捜査官）
2020年10月11日に、ファイブアイズとインド、そして日本が共同で国際声明
を発表しました。内容は、企業に対し法執行機関がE2EE（エンドツーエンド暗
号化）コンテンツにアクセスできる方法を提供するよう要請するものです。
このような国際声明が出されたということは、それだけ世界各国でE2EEが犯罪
捜査の大きな妨げになっているということを表しているのと同時に、企業側が要
請に応じていないということを表しています。
2016年にはFBI対Appleの戦いがありました。FBIが銃乱射事件犯人のiPhone
のロック解除をAppleに依頼しましたが、Appleはこれを拒否。連邦裁判所も
Appleに対し解除命令を出しましたが、Appleはこれも拒否。最終的にFBIは
第三者の協力を得て別の方法でロックを解除し、ある意味で双方の面目を保っ
たまま戦いは収束しましたが、根本的な問題は何ら解決していません。
私も警視庁でサイバー犯罪捜査に従事していた時は、E2EEの壁に大いに悩ま
されました。捜査機関にとって、暗号化通信は透明人間になる薬と同じくらい
のインパクトがあります。
捜査員は職務として、また使命感としてただひたすらに透明人間となったホシ
を追い続けるのですが、事件とは関係のない第三者から見た場合に、法執行機
関が暗号化通信をトレースしようとすることをある種の脅威と感じることもま
た事実です。
プライバシーとトレーサビリティの境界線は時代とともに変動しています。
常にテロの標的となっているニューヨーク、ウォール街からそう遠くない場所
に、Lower Manhattan Security Coordination Center(LMSCC)という施設があ
ります。詳細な場所は非公開となっていますが、私が以前ニューヨーク市警に
派遣されていた時に、特別にLMSCCの中に入ることが許されました。
NYPDのパトカーで行くと目立ってしまうため警察車両とはわからない車で向
かい、複数のセキュリティをくぐり抜けてようやくLMSCC内部に立ち入るこ
とができました。
ここではニューヨーク市警が設置している路上の防犯カメラに加えて、エリア
内の主要なビルの防犯カメラもリアルタイムでモニタリングできるようになっ
ていて、これを警察官とビルのセキュリティ担当者が一緒に監視するという形
で運用されています。また、高度な画像認識技術により特定の人物や車両を容
易に追跡、継続監視できるようになっています。
これはつまり、そのエリアでの私たちの行動は全て筒抜けになっていると言え
ます。もちろん、監視する上で令状などは必要ありません。
LMSCCは9.11同時多発テロ以降、市民の命を守るためにはある程度のプライ
バシー侵害は止むを得ないということで、一定のコンセンサスを得て運用開始
となりましたが、昔のニューヨークであれば世論が許さなかったでしょう。
では、下記の場合はどうでしょうか。
あなたはE2E暗号化サービスの責任者です。良いか悪いかは別として、その気
になればこっそりバックドアを作ってE2Eの暗号化を解除する術を持っていま
す。
ある日、あなたの大切な人がテロ組織に誘拐されてしまいました。テロ組織は
あなたのE2E暗号化サービスを使って連絡を取り合っています。警察からは、
この通信が唯一の手がかりであると言われました。
選択肢は二つ。
1.「わかりました。大切な人の命には代えられないので今すぐ暗号化を解除で
きるようにしましょう」
2.「いやいや、バックドアなんて作ったらプライバシー上・セキュリティ上の
重大な脅威となるので、私の大切な人の命のためといえども一切協力しませ
ん」
いかがでしょうか。前述のAppleの件も、ティム・クックの家族が誘拐された
事件だったらAppleの対応はまた違うものになっていたでしょうか。
これはもはや技術の話でも法律の問題でもなく、哲学の領域です。
この境界線を明確に引くことは誰にもできませんし、無理に引こうとしてはい
けないのだと思います。
その意味で、FBI対Appleの件の幕引きは最も理想的な形だったのかもしれま
せん。
＃連載リレーコラム、ここまで
＜お断り＞本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属団体及びその業務と
関係するものではありません。
＜ワンクリックアンケートお願い＞
今回のメールマガジン第204号の感想をお寄せください。
https://ux.nu/XPPec
※googleアンケートフォームを利用しています。
【部会・WGからのお知らせ】
★「CISOハンドブック―業務執行のための情報セキュリティ実践ガイド」が
出版されました。
会員企業様へは贈呈分を1社1冊お送りさせていただいております。
書籍の案内はこちらから
https://www.jnsa.org/result/act_ciso/index.html
出版元の技術評論社の販売サイト、Amazonなどでも購入いただけます。
★「みんなの「サイバーセキュリティコミック」」
2021年度のスポンサー募集中です。（会員限定）
詳しくはJNSA事務局まで。
2020年度の情報はこちらをご覧ください。
https://www.jnsa.org/comic/
★ソリューションガイド十大脅威を公開いたしました！
JNSAソリューションガイド活用WGでは、独立行政法人情報処理推進機構様
が公開する「情報セキュリティ10大脅威 2020」に対応したソリューション
を検索紹介する「IPA十大脅威で検索」を公開いたしました。
https://www.jnsa.org/JNSASolutionGuide/ThreatAction.do
★標準化部会主催セミナー（1/15開催）「デジタル社会に不可欠なサイバー
セキュリティ標準化動向－巧妙化、高度化、多様化するサイバー攻撃に備え
て」の講演資料を公開しました。
【事務局からのお知らせ】
★2020年度「JNSA賞」が決定いたしました！
2021年3月18日（木）、19日（金）に開催予定のJNSA主催シンポジウム
「Network Security Forum 2021（NSF2021）」にて、表彰式を行う予定です。
https://www.jnsa.org/jnsaaward/2020/winner.html
★「Network Security Forum2021（NSF2021）」を3月18日（木）、19日（金）
の2日間にわたってオンライン開催で企画中です。詳細が決定しましたら、
JNSAのホームページでご案内いたします。お楽しみにお待ちください。
★2020年の「セキュリティ十大ニュース」を公開しました！
「JNSA2020セキュリティ十大ニュース」
～コロナが見せつけた大変革時代の幕開け～
https://www.jnsa.org/active/news10/
★無料でご利用いただけます！「情報セキュリティ理解度チェックサービス」
https://slb.jnsa.org/eslb/
組織の情報セキュリティ向上のための一助としてご活用下さい。
★リモートワークに活用ください！
「緊急事態宣言解除後のセキュリティ・チェックリスト」
https://www.jnsa.org/telework_support/telework_security/index.html
★JNSA事務局を騙った詐欺事件が相変わらず頻発しています。
当協会から弁護士費用を請求したり、金銭受取の念書を発行することは一切
ありませんので、不審な点がありましたら当協会まで直接お問合せ下さい。
☆コラムに関するご意見、お問い合わせ等はJNSA事務局までお願いします。
office@jnsa.org
☆メールマガジンの配信停止は以下URLの「解除」よりお手続き下さい。
配信停止連絡 <http://www.jnsa.org/aboutus/ml.html>
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JNSAメールマガジン 第204号
発信日：2021年2月5日
発 行：JNSA事務局 office@jnsa.org
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アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.
グローバルセキュリティ部長 海老谷成臣
（元警視庁サイバー犯罪捜査官）
2020年10月11日に、ファイブアイズとインド、そして日本が共同で国際声明
を発表しました。内容は、企業に対し法執行機関がE2EE（エンドツーエンド暗
号化）コンテンツにアクセスできる方法を提供するよう要請するものです。
このような国際声明が出されたということは、それだけ世界各国でE2EEが犯罪
捜査の大きな妨げになっているということを表しているのと同時に、企業側が要
請に応じていないということを表しています。
2016年にはFBI対Appleの戦いがありました。FBIが銃乱射事件犯人のiPhone
のロック解除をAppleに依頼しましたが、Appleはこれを拒否。連邦裁判所も
Appleに対し解除命令を出しましたが、Appleはこれも拒否。最終的にFBIは
第三者の協力を得て別の方法でロックを解除し、ある意味で双方の面目を保っ
たまま戦いは収束しましたが、根本的な問題は何ら解決していません。
私も警視庁でサイバー犯罪捜査に従事していた時は、E2EEの壁に大いに悩ま
されました。捜査機関にとって、暗号化通信は透明人間になる薬と同じくらい
のインパクトがあります。
捜査員は職務として、また使命感としてただひたすらに透明人間となったホシ
を追い続けるのですが、事件とは関係のない第三者から見た場合に、法執行機
関が暗号化通信をトレースしようとすることをある種の脅威と感じることもま
た事実です。
プライバシーとトレーサビリティの境界線は時代とともに変動しています。
常にテロの標的となっているニューヨーク、ウォール街からそう遠くない場所
に、Lower Manhattan Security Coordination Center(LMSCC)という施設があ
ります。詳細な場所は非公開となっていますが、私が以前ニューヨーク市警に
派遣されていた時に、特別にLMSCCの中に入ることが許されました。
NYPDのパトカーで行くと目立ってしまうため警察車両とはわからない車で向
かい、複数のセキュリティをくぐり抜けてようやくLMSCC内部に立ち入るこ
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ここではニューヨーク市警が設置している路上の防犯カメラに加えて、エリア
内の主要なビルの防犯カメラもリアルタイムでモニタリングできるようになっ
ていて、これを警察官とビルのセキュリティ担当者が一緒に監視するという形
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易に追跡、継続監視できるようになっています。
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LMSCCは9.11同時多発テロ以降、市民の命を守るためにはある程度のプライ
バシー侵害は止むを得ないということで、一定のコンセンサスを得て運用開始
となりましたが、昔のニューヨークであれば世論が許さなかったでしょう。
では、下記の場合はどうでしょうか。
あなたはE2E暗号化サービスの責任者です。良いか悪いかは別として、その気
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す。
ある日、あなたの大切な人がテロ組織に誘拐されてしまいました。テロ組織は
あなたのE2E暗号化サービスを使って連絡を取り合っています。警察からは、
この通信が唯一の手がかりであると言われました。
選択肢は二つ。
1.「わかりました。大切な人の命には代えられないので今すぐ暗号化を解除で
きるようにしましょう」
2.「いやいや、バックドアなんて作ったらプライバシー上・セキュリティ上の
重大な脅威となるので、私の大切な人の命のためといえども一切協力しませ
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事件だったらAppleの対応はまた違うものになっていたでしょうか。
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出版されました。
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書籍の案内はこちらから
https://www.jnsa.org/result/act_ciso/index.html
出版元の技術評論社の販売サイト、Amazonなどでも購入いただけます。
★「みんなの「サイバーセキュリティコミック」」
2021年度のスポンサー募集中です。（会員限定）
詳しくはJNSA事務局まで。
2020年度の情報はこちらをご覧ください。
https://www.jnsa.org/comic/
★ソリューションガイド十大脅威を公開いたしました！
JNSAソリューションガイド活用WGでは、独立行政法人情報処理推進機構様
が公開する「情報セキュリティ10大脅威 2020」に対応したソリューション
を検索紹介する「IPA十大脅威で検索」を公開いたしました。
https://www.jnsa.org/JNSASolutionGuide/ThreatAction.do
★標準化部会主催セミナー（1/15開催）「デジタル社会に不可欠なサイバー
セキュリティ標準化動向－巧妙化、高度化、多様化するサイバー攻撃に備え
て」の講演資料を公開しました。
【事務局からのお知らせ】
★2020年度「JNSA賞」が決定いたしました！
2021年3月18日（木）、19日（金）に開催予定のJNSA主催シンポジウム
「Network Security Forum 2021（NSF2021）」にて、表彰式を行う予定です。
https://www.jnsa.org/jnsaaward/2020/winner.html
★「Network Security Forum2021（NSF2021）」を3月18日（木）、19日（金）
の2日間にわたってオンライン開催で企画中です。詳細が決定しましたら、
JNSAのホームページでご案内いたします。お楽しみにお待ちください。
★2020年の「セキュリティ十大ニュース」を公開しました！
「JNSA2020セキュリティ十大ニュース」
～コロナが見せつけた大変革時代の幕開け～
https://www.jnsa.org/active/news10/
★無料でご利用いただけます！「情報セキュリティ理解度チェックサービス」
https://slb.jnsa.org/eslb/
組織の情報セキュリティ向上のための一助としてご活用下さい。
★リモートワークに活用ください！
「緊急事態宣言解除後のセキュリティ・チェックリスト」
https://www.jnsa.org/telework_support/telework_security/index.html
★JNSA事務局を騙った詐欺事件が相変わらず頻発しています。
当協会から弁護士費用を請求したり、金銭受取の念書を発行することは一切
ありませんので、不審な点がありましたら当協会まで直接お問合せ下さい。
☆コラムに関するご意見、お問い合わせ等はJNSA事務局までお願いします。
office@jnsa.org
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配信停止連絡 <http://www.jnsa.org/aboutus/ml.html>
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JNSAメールマガジン 第204号
発信日：2021年2月5日
発 行：JNSA事務局 office@jnsa.org
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