★☆★JNSAメールマガジン 第259号 2023.3.31☆★☆
2023/03/31 (Fri) 15:30
★☆★JNSAメールマガジン 第259号 2023.3.31☆★☆
こんにちは
JNSAメールマガジン 第259号 をお届けします。
メールマガジンはJNSAのホームページでもご覧いただけます。
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今回のメールマガジンは前号に引き続き
アレシア国際法律事務所 弁護士 有本真由様にご寄稿いただきました。
【連載リレーコラム】
セキュリティクリアランス:
米国制度のご紹介と日本導入にあたっての諸論点(2)
アレシア国際法律事務所 弁護士 有本真由
〈前号、セキュリティクリアランス:
米国制度のご紹介と日本導入にあたっての諸論点(1)からの続き>
今回は我が国においてクリアランスを民間に拡充する際の諸論点を考察します。
【日本の制度】
我が国でもクリアランスに相当するものとして、特定秘密保護法上の適性
評価があります。同法では、適性評価を受けて特定秘密を漏らすおそれがない
と認められた行政機関の職員又は行政機関の事業を請け負う適合事業者の
従業員に限り、特定秘密が開示されます。
適性評価での調査事項は、(1)特定有害活動及びテロリズムとの関係、
(2)犯罪及び懲戒の経歴、(3)情報の取扱いに係る非違の経歴、(4)薬物の濫用
及び影響、(5)精神疾患、(6)飲酒についての節度、(7)信用状態その他の経済
的な状況、に関する事項です。
【諸論点】
現在我が国で行われているクリアランスの民間への拡充の議論(以下、本議論)
の背景には、国際共同研究への参画、外国政府からの受注に際し、他国から
クリアランスを求められることがあるが、我が国ではそれを有する民間人が
少ない、という事情があります。クリアランスは本来、機密情報を開示すると
いう政府側の必要性に基づくものであり、各国のクリアランスは当該国家への
忠誠心を問うものであって他国への忠誠心を測るものではないことに鑑みれば、
国際ビジネス・研究推進のためにクリアランスを民間拡充するというのは、
制度の「転用」ともいえる現象です。とはいえ、政府機密情報とは関係のない
資格にしてしまっては、国際的に信用されず目的が達成できません。他国制度
との機能的同質性が求められます。そこが本議論の難しい点です。
以下、重要な論点を挙げます。
(1)調査事項。米国では、裁定にあたり、対象者と外国との関係を重視して
います。諸外国でも、日本の公安調査庁に相当する機関への照会が行われて
います。
対して、我が国の適性評価における調査事項のうち外国との関係に関する
ものは、前記(1)のみであり、その具体的な調査事項、方法は外部からは
明らかではありません。
また、米国では、調査で現れた事情すべてを総合考慮するのに対し、我が国
では、前記調査事項(1)~(7)以外を調査することを禁じ、仮に調査事項以外の
事実が調査過程で現れても記録に残さず判断の基礎としない、としています。
他国制度との機能的同質性に照らせば、これは看過できない差異でしょう。
(2)申請主体。米国では申請主体は行政機関であり、個人は申請できません。
他方、本議論の前提は、民間がクリアランスを取得したい、という方向のもの
です。かといって、個人の申請を認める場合、政府が調査費用を負担する理由
はあるか、機密情報開示の契機がない中で政府が真摯に調査を行うか、そうした
制度を他国が信頼するか、という問題があります。
(3)区分。我が国では特定秘密保護法上の適性評価は「特定秘密」にかかる
1区分のみです。海外でクリアランスを求められる場合、ベーシックな身上
調査事項を確認したい、という場合もあることを踏まえると、より軽度な区分
を設けてもよいかもしれません。
(4)罰則。我が国では、過失による特定秘密の漏えいは、2年以下の禁錮又
は50万円以下の罰金とされ、比較的重くなっています。これを維持するかも
検討事項の一つです。
(5)明示。他国に対して我が国のクリアランスが他国のものと機能的に同質
であると説明できるように、法令等の文言にも配慮すべきでしょう。
(6)情報保護。本議論は、いわば、国際ビジネス等への参画という入口の
条件をクリアするためのものです。では、参画できたとして、共同事業で開発
された情報が他国に機密指定等されて情報が自由に活用できないということに
ならないか、他国から我が国(の民間企業)の情報(技術)を守れるか、と
いう視点も重要です。
以上、クリアランスに関する議論の検討の一助となりましたら幸いです。
#連載リレーコラム、ここまで
<お断り>本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属団体及びその業務と
関係するものではありません。
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(2)犯罪及び懲戒の経歴、(3)情報の取扱いに係る非違の経歴、(4)薬物の濫用
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少ない、という事情があります。クリアランスは本来、機密情報を開示すると
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忠誠心を問うものであって他国への忠誠心を測るものではないことに鑑みれば、
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(1)調査事項。米国では、裁定にあたり、対象者と外国との関係を重視して
います。諸外国でも、日本の公安調査庁に相当する機関への照会が行われて
います。
対して、我が国の適性評価における調査事項のうち外国との関係に関する
ものは、前記(1)のみであり、その具体的な調査事項、方法は外部からは
明らかではありません。
また、米国では、調査で現れた事情すべてを総合考慮するのに対し、我が国
では、前記調査事項(1)~(7)以外を調査することを禁じ、仮に調査事項以外の
事実が調査過程で現れても記録に残さず判断の基礎としない、としています。
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(2)申請主体。米国では申請主体は行政機関であり、個人は申請できません。
他方、本議論の前提は、民間がクリアランスを取得したい、という方向のもの
です。かといって、個人の申請を認める場合、政府が調査費用を負担する理由
はあるか、機密情報開示の契機がない中で政府が真摯に調査を行うか、そうした
制度を他国が信頼するか、という問題があります。
(3)区分。我が国では特定秘密保護法上の適性評価は「特定秘密」にかかる
1区分のみです。海外でクリアランスを求められる場合、ベーシックな身上
調査事項を確認したい、という場合もあることを踏まえると、より軽度な区分
を設けてもよいかもしれません。
(4)罰則。我が国では、過失による特定秘密の漏えいは、2年以下の禁錮又
は50万円以下の罰金とされ、比較的重くなっています。これを維持するかも
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(5)明示。他国に対して我が国のクリアランスが他国のものと機能的に同質
であると説明できるように、法令等の文言にも配慮すべきでしょう。
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